年金制度は現役世代から受給世代への賦課方式、つまり社会的な仕送りです。
そして仕送りの一部を税金や会社が負担するとともに、積立金を計画的に使って、受給世代が増えて現役世代が減る時期にも安定的な給付を行おうというわけです。
さらに重要なのは、現役世代の減少や受給世代の寿命の伸びを反映させて毎年の給付額を自動的に調整する仕組みが、2004年に導入されていること。
以前に少しだけふれた「マクロ経済スライド」です。
実際に2019年度、2020年度と2年連続で発動しました。
この制度を厳格に運用していけば、給付水準が収入を上回って年金財政が破たんするようなことは原理的に起きないわけです。
本来の年金額は賃金や物価の変動に応じて改定されますが、ここからスライド調整率を差し引いたのが実際の改定率になります。
2020年度は、本来の改定率+0.3%対してスライド調整率▲0.1%(※)だったため、実際の改定率は+0.2%に抑えられました。
(※)公的年金被保険者数の変動率(+0.2%)+平均余命の伸び率(▲0.3%)
スライド調整率の分だけ賃金・物価に対して給付額の伸びが低い状態が続くと、現役世代の平均手取りに対する年金額の割合(所得代替率)は次第に低下していきます。
どれくらいのペースでいつまで下がるのかは経済の状況によって異なります。
2019年の財政検証(※)では、経済が好調なケースから不調なケースまでⅠ~Ⅵの6パターンを想定し検証しています。
(※)少なくとも5年ごとに行われる年金財政健全性の検証
Ⅰ~Ⅲが経済成長と女性や高齢者の労働参加が進むケース、Ⅳ~Ⅴが経済成長と労働参加が一定程度進むケース、Ⅵが経済成長と労働参加が進まないケースです。
好調なケースでは、スライド調整が比較的早い時期(図中の給付水準調整の終了年度)に終わりますが、ケースⅤのように スライド調整は2058年度まで続いてしまい、その分、所得代替率の低下が大きくなってしまいます。
そして最悪のケースⅥでは、2052年度に積立金が底をついてしまうことに…
こんな数字を厚生労働省が公表していますが、本当に年金は大丈夫なんでしょうか…
コメントを残す