投資信託等への移転によって預金を削減できれば、揺らいでいる地方銀行の経営基盤安定化への道が見えてくる。
そのために「処分庁」から「育成庁」への転換を進める金融庁は、国民に投資の必要性を訴える必要があった。
だからこそ老後2,000万円問題の引き金となった報告書を公表したのです。
「投資をしないと老後が大変ですよ!」と国民に知らしめたわけです。
詰まるところ、金融庁の我田引水に他なりません。
ところで、「投資をしないと老後が大変ですよ!」というセリフ、どこかで聞いたことはないですか?
他にも投資の必要性をアピールする言い回しは色々とありますが、銀行の窓口などで耳にするセールストークです。
例えば、こんな感じ。
「投資をしないと老後が大変ですから、預金の一部を投資信託に切り替えませんか?」
要するに本来は金融機関が行っている営業を、金融庁が大々的にやってしまったのです。
その結果、国民の鬱憤が一気に爆発し、年金不安という地雷を踏むことになりました。
これは明らかに金融庁のPRミスであり、参院選を控えた政府もさぞや焦ったことでしょう。
とはいえ、まさかここまで大事になろうとは、誰も想定していなかったはず。
なぜなら「年金だけでは不足するかもしれないから、早く投資をはじめましょう」という、至ってまともなことしか言っていないわけですから。
というより「年金だけで生活できると思っている人なんて今時いるの?」という驚きを禁じ得なかったかもしれません。
そして今回の騒動を受けて、年金を管轄する厚生労働省のお役人はそれこそ怒り心頭だったでしょうね。
「オレたちの努力をムダにしやがって!」と。
せっかく「100年安心」というスローガンで年金制度の周知を図ってきたのに、また年金不安が再燃してしまいましたから。
昨年の「年金返せデモ」は、若者層が多いのが特徴でした。
そこから読み取れるのは、金融庁がターゲットにしていた投資資金の余裕がある中高年層には、報告書が響かなかったということ。
「2,000万円か、あるから大丈夫だな」と彼らは思ったことでしょう。
その一方で、投資資金の余裕もなく、年金制度に不信感を持っている若者層を刺激してしまったわけです。
以上が大きな物議を醸した「老後2,000万円問題」の真相です。
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