報告書を取りまとめたのは金融庁に設けられた金融審議会。
同審議会は、金融制度や資本市場など国内金融関係の重要事項について、調査・審議を目的に設置された、内閣総理大臣、金融庁長官および財務大臣の諮問機関です。
金融制度ワーキング・グループ、市場ワーキング・グループ、ディスクロージャーワーキング・グループなど必要に応じて様々なワーキング・グループが活動しています。
そして昨年6月に「老後2,000万円問題」を世に提唱したのが、市場ワーキング・グループの報告書「高齢社会における資産形成・管理」というわけ。
ご参考までに市場ワーキング・グループのメンバー名簿です。
このメンバーが2018年9月から計12回の議論を重ね、その内容を公表したわけです。
最終的に報告書は事実上の撤回となったものの、そのまま忘れ去るのはあまりに早計です。
では、具体的に報告書を読み解いていきましょう。
① 人口動態 「2017年の平均寿命は、男性が81.1歳、女性が87.3歳」
日本人が年々長寿化していることは周知の事実でしょう。
1950年頃の男性の平均寿命は約60歳でしたが、現在では約81歳まで延び、60歳の約4分の1が95歳まで生きるという試算もあります。
② 収入・支出 「2017年の高齢夫婦無職世帯(夫65歳以上、妻60歳以上の夫婦のみ)の平均毎月赤字額は約5.5万円」
60代以上の支出を詳しく見てみると、現役期と比較して2~3割程度減少していますが、収入も給与から年金への移行などで減少しているため、毎月の赤字額は約5.5万円となっています。
以上の統計的な事実を確認したうえで、平均余命を20~30年とした場合の生涯赤字額を計算してみましょう。
5.5万円×20年=1,320万円
5.5万円×30年=1,980万円
では、ここで報告書の原文を確認してみます。
「夫65歳以上、妻60歳以上の夫婦のみの無職の世帯では毎月の不足額の平均は約5万円であり、まだ20~30年の人生があるとすれば、不足額の総額は単純計算で1,300~2,000万円になる」
この一文こそが「老後2,000万円問題」を引き起こした発端に他なりません。
コメントを残す